石川テレビ

石川さんPUSH!

 はつみ(田中美里)が勤めるスナックに素性を隠して訪れた志方(遠藤憲一)だったが、明るく振る舞う中に見せる陰りに、苦悩や悲しみを感じ、何も告げられぬまま立ち去る。雪子(田中美佐子)は「あの家族にはもう関わらないで」と言うのだが…。会社に出た志方を待っていたのは、思いがけない部署への異動の辞令だった。まるで懲罰人事だ。志方の鬱屈は募る。一方、はつみは、満(清水大登)の面会に少年院に赴くが、坊主頭で礼儀正しく挨拶をする満に他人のように冷たく言われる。「もう来ないで下さい」

 「…八巻満の母親に会ってきた」
 志方の言葉に、雪子は驚いた。はつみが勤める店を訪ねたこと、結局素性を告げずに帰ったことを話す志方に、雪子は「もうあの人たちに関わってほしくない」と告げる。何をしたって恭介は戻ってこない。このまま憎しみに縛られていては、いつまでたっても家族は前に進めない。娘たちのためにも、もう加害者家族には関わらないで…妻の言葉に押し黙るしかなかった。
 一方のはつみは、気持ちを奮い立たせて満と懸命に向き合おうとしていた。しかし、満は「もう来ないで下さい」とまるで他人を見るような目で冷たく告げるのみ。はつみは、崩れ落ちそうになる胸の内を、笑顔で取り繕うことしかできなかった。
 ようやく職場に復帰した志方だったが、待っていたのはまるで懲罰人事のような理不尽な異動で、資料整理をする閑職に追いやられてしまう。世間やマスコミからは叩かれ、裁判の傍聴すら許されず、会社でも邪魔者扱い…虚しさがつのる。
 加害者の母親からの謝罪が無ければ家族の再スタートなどあり得ない。はつみの店に足を向ける志方。今日こそはすべてぶちまけてやる…しかし、再会を喜ぶはつみの笑顔に決意が揺らぐ。店が終わった後、はつみを居酒屋に誘い出した志方だったが、帰り道、はつみの目に突然溢れる涙…。加害者の母親が抱える苦悩を目の当たりにする志方。生きる苦しみは同じなのかもしれない――はっと我に返り、すがりつくはつみを振り切って立ち去る。
 ある日、志方は葵電気の丹野(梨本謙次郎)からの挨拶状を受け取る。かつて志方とまとめた契約が不成立になってしまった影響は大きく、下田に転勤させられたというのだ。責任を感じる志方は、丹野を訪ねてみようと思い立つ。
 丹野は、明るく志方を迎えてくれた。大いに飲んで語り明かした翌日、丹野の誘いで二人は断崖を訪れる。「この断崖の前では、人間なんてちっぽけなものだと思い知らされます」丹野の顔にふと差す陰りに、言葉をなくす志方…。
 丹野が断崖から身を投げたという知らせが届いたのは、数日後のことだった…。