石川テレビ

石川テレビ 8ch

2022年5月7日(土) 午前10時25分~午前11時20分

金沢美術工芸大学の大学院生、深田拓哉。築70年のシェアハウスに、彼女とペットのゴキブリと暮らす。部屋の障子は破れ、着るものには無頓着。バイト代の大半は作品の制作費に消えていく。深田が作るのは鉄の彫刻。飛び出し注意の看板を巨大化させたり、鉄の塊をモーターで回したり。一見何を言いたいのか分かりづらい作品たちを、彼の指導者はこう理解する。

「絶対的にバカバカしいことや無駄なことを、ひっくり返して物を言う」

 

深田のシェアハウスには同じ美大生、秋山雅貴も住んでいる。将来の目標は「有名人になること」。肖像画家を目指す彼はあっけらかんと語る。深田と違い、親からの仕送りがない。学費と生活費はアルバイト代と奨学金から捻出する。コロナ禍でバイト先が長期休業になるや、自分の作品を売って学費を稼いだ苦労人だ。

美大生の作品を受注販売する会社を起業するなど、華やかな肖像画を描いては得意のビジネストークで販売までも手掛ける秋山。そんな秋山に対する懐疑的な思いを深田は隠そうとしない。

「片手間で書けるほど僕は器用じゃない」

「一生懸命考えて作ったものが3万円とか、すごく切ない」

「絵が面白くない。これを30年続けるとすると、どうなんだろう」

だが当の深田はというと、言葉による表現の未熟さから、印象に残る作品を生み出しても作品のコンセプトをうまく伝えられないジレンマに陥る。そして、作品が金沢市内の公園に展示されるや市役所が深田に突きつけたのは、「表現としてふさわしくない」という撤去要請だった・・・