<受賞理由>
受賞者は金沢の木工の技を受け継ぐ数少ないひとりで、木の板を組み合わせて成形する指物(さしもの)や、鑿(のみ)や豆鉋(まめかんな)などを用いて木の塊から刳り出して形を作る刳物(くりもの)の技法で樹齢数百年〜数千年の材を使用し、その木の持っている美しさや特徴を最大限に表現できるように作品を制作している。
1948年、輪島市で生まれた受賞者は、1963年より建具店で木工技術を習得し、木工芸人間国宝・氷見晃堂(ひみ こうどう)や二代・池田作美(いけだ さくみ)氏の作品に刺激を受け、独学で木工芸の創作活動を始めた。地道な活動を続け、日本伝統工芸展等に出品を重ね、神代杉の柾目や板目の本体に板目の象嵌を施すことで自然の杢目に変化を持たせる独自の技法を編み出した。貴重な木材でも伝統工芸では使えない端材がたくさんあり、もったいない、木の端材を作品にうまく使うことができないかと考えたすえ、9年前に、細い木を縦に嵌め込んだ格子状の欄間、筬欄間(おさらんま)をヒントに、建具職人として培ってきた繊細で緻密な技と貴重な素材への思いが新しい作風を生み出し、昨年度の第70回日本伝統工芸展で高松宮記念賞を受賞するなど、高く評価されている。
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