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能登半島地震から再生へ - 輪島朝市通りの未来を模索する人々の声
輪島市の復興のシンボルとして位置づけられているのが大規模な火災があった朝市通り周辺です。今は更地が広がっていますが新たな姿を模索しようと関係者による話し合いが少しずつ進んでいます。住民に商店街、朝市組合、それぞれの思いを取材しました。
約5万平方メートル。輪島市の朝市通り周辺です。更地が広がるこの場所は輪島の人たちにとってかけがえのない場所でした。
観光客「すみません、あの朝市どこけ」日吉酒造店 日吉さん「出張朝市は向こうのワイプラザっていうショッピングセンターの中になんで」観光客「なか?ワイプラザの中?」日吉さん「そうです。ここには無いです。ここは朝市が元々やってた場所。現状は出張朝市はワイプラザの中でやってます。」観光客「燃えたとこはどこ?」日吉さん「燃えたのはここの更地になっているとこ。更地になっているところ全部です」
日吉さん:
「去年の8月にはだいぶ更地にはなっていたんですね。でその時にパってふと考えたら今まで見えなかったものが見えてるわけですよね。建物だった橋なんて見えませんでしたし向こうの川向かいの町も見えることは無かったので。そういう部分でいくと今までと違う光景というのがふとした時になんかなんでこうなったんだろうと思ったこともありますし。」
日本三大朝市の一つ「輪島朝市」。朝市通りの両側にオレンジ色のテントが並び、ピーク時は年間200万人を超える観光客が訪れたといいます。しかし去年の元日…
「輪島市上空です。大規模な火災が発生しております。炎の勢いは収まる気配がありません。」
日吉さん:
「外から来た方が戦争があったのと言うくらいの焼け野原状態。これが片付くのがどれくらいかかるんだろうと思いながら過ごしてた感じですね。」
日吉さんは朝市通りのある本町周辺地区の住民の代表として輪島市などと復興プランについて話し合ってきました。
「生まれも育ちもほとんどここですね。この部分が店舗兼住居って感じで、この2階とかに(当時は)住んでて、店舗は半壊って扱いなんですけど後ろの酒蔵の部分は、製造の部分というか土蔵とか全て全壊という扱い。一部半壊が入っていますけどほぼ全壊って扱いですね。」
Q 復興から再生というか今光は見えてきていますか?今の時点では
「自分の中では見えてないです。街づくりに関しては。余計なんか震災当初よりももっとなんか迷いに入っている状態ですね。」
現在、輪島市は火災で焼失したエリアで区画整理の準備を進めています。再建を諦めた住民から土地を買い上げたうえで新たな道路や施設を整備するため住民が所有する土地を移転することも行います。
「協議会ではまだこの町をどうするかっていう細かい話まではいってなくて。この町をどういう風に活用するかっていうのは、地権者自身も皆さん、自分の土地がどういうふうなかたちでどこにっていう境界線がはっきりしていない状況なので何も進めないという形ですね」
輪島市は来年の春をめどに新たな土地の境界を定めたい考えです。それまで住民はこの場所で事業や生活を立て直すことはできません。
「ここの場合は地域住民、あと商店関係、あと朝市とか色々皆さんいますけど皆さんが自分が今どういう風にしたいかっていう理想をまだ語っている段階かなと自分は思ってて、今後その理想からどういう風に現実的にすり合わせしてどういうふうにしていくかっていう話になっていくのかなという捉え方でいる感じです。」
朝市通りから少し離れたところに一軒の印刷所があります。経営者の高森健一さん。朝市通りのそばに事務所を構えていました。
本町商店街振興組合 高森健一理事長:
「これ燃え始めたとき。うちの女房のお兄さんが見に行ってくれたの。」
Q 燃えているときに?
「燃えているときに。だから本当にね。まぁこうなっちゃったんだなっていう印象でしたよ。」
かつての朝市通り。朝市の露店の裏に店舗を構えていたのが本町商店街です。高森さんはその代表をつとめています。
「今の土地の区画整理だったらここにある。こないだもらったやつ。もともと(実家は)ここにあったんだけどここに移る予定みたいな感じ。」
Q 一応近くは近くなんですね。場所ちょっと替わってますけど。
「まぁそう、向かいに移っただけ。これはね1回目の提案で、じゃあこれで良いですかっていうのを皆さんに確認しているところ。」
Q じゃあ今輪島市としては提案して返事待ちみたいな?
「そういう感じ」
Q 商店街で事業されてた方は今は?
「輪島にいる人間は3分の1くらいかな。皆さんまだ避難状態というか。自分のところで建物を作ることもできないんで、だから逆に違う仕事にとりあえず就いている人もいる。まぁアルバイトみたいなもんかな。」
本町商店街は火災で店舗を失った事業者らがいち早く事業を再開できるように、仮設店舗の建設を輪島市に求めました。今のところ14店舗が入る予定で再来年春のオープンを目指しています。
「時間がかかればかかるほど離れていく人間が多くなっちゃうからやっぱり1年でも1か月でも早くやれることはやった方がいいんじゃないかなという思いでやっていますけど」
利用期限が終わった後は仮設店舗の施設を活用しつつ商店街のにぎわいを取り戻していきたいと考えています。
「もの見せるんだったこれね。これガスエビってね。甘エビより美味しいの。甘みがあんのね。」
輪島市朝市組合の組合長 冨水長毅さん。
「今年の6月に入って、今現状38店舗プラス農家の方々も入りますので組合員数で言うと48名、50名近いかたが今復帰をされてこちらのワイプラザの方へ出店しています。さっきもツアーのガイドさん、よく見るかた来てましたので。それとは別のツアーで来てました。去年より全然バスの入り込みが多い。応援ツアーというかね。そ
ういうのが今入ってますね。」
朝市出店者:
「やっぱりありがたいことですよ本当に。こういうほら雨にも当たらず風にも当たらず最高ですよ。だって風が吹いた、台風が来た、あれが来たで結局商売できん時もあったし。」
Q この後はどこの場所でどんなふうに商売したいですか?
「どうなるかね。もうほらだって一寸先はわからんだろ。自分きょうは健康だけど明日はわからんし、あんまり考えてないね。」
輪島市朝市組合がこの商業施設で出店できるのは再来年の夏までの予定です。冨水さんは輪島市に対し朝市通り周辺に雨や雪をしのげる屋根付きの広場の整備を求めています。まだ具体的なスケジュールはでていませんが将来的には朝市通り周辺に屋根付きの広場と本町商店街の仮設店舗が整備され、通りと広場の両方にオレンジ色のテントが並ぶことになるかもしれません。
「僕らのイメージはこのテントのイメージですからこの雰囲気を残したい。先は長いのでこれを切らさないようにいくというそういった忍耐は非常に大変だと思うんですけど。やらないとね。やっぱり能登が衰退すると思うので、なんとかやらないとということですね。ただただやらないとということですね。」
住民、商店街、朝市組合。立場や事情は少しずつ異なりますがみなが望んでいるのは街のにぎわいを取り戻すこと。何年先になるか見通すことはできませんが朝市通りは以前とは異なる新たな姿での復興を目指しています。