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【能登人を訪ねて】#61 祭りを通じた神社と地域との絆 輪島市重蔵神社・能門亜由子さん
「能登人を訪ねて」今回は輪島市で1300年余りの歴史を持つ神社を訪ねました。地震で大きな被害を受けながらも地域への支援活動を続ける禰宜。その理由は「まつり」を通した住民との深い縁がありました。
稲垣真一アナウンサー:
「輪島市河井町の重蔵神社に来ています。2007年の能登半島地震で倒壊し、2020年に再建されたこの大鳥居も去年の地震で被害を受け、生々しい傷跡がそのままになっています。こうした中でも重蔵神社は地域の支援拠点となり、去年の夏は祭りを成功させました。あの地震から1年半、現状は今年の祭りは、話を伺いました」
能門亜由子さん:
「宜しくお願い致します。重蔵神社の能門と申します。」
輪島市の中心部に鎮座し1300年以上の歴史を持つ重蔵神社。能門家21代目として生まれた亜由子さんは16歳から神職に就き、現在は病気療養中の父に代わって神社の仕事一般を執り行っています。
稲垣アナ:
「地震から一年半経った現状という事なんですが…」
能門さん:
「倒壊は免れましたけども、この拝殿も全壊(判定)でいま全く使えない状況で、再建の計画も全く立っていない状況です。」
拝殿には、倒壊を防ぐため専門ボランティアによる補強が施されてはいますが次に大きな地震が起こればいつ何が起こってもおかしくない状況です。さらに、本殿横の仮設倉庫には…
能門さん:
「こちらが輪島塗で出来ている曳山の山車になります。重蔵神社の春祭りに山車を出して街中をお祓いするという…」
毎年4月始めに行われる重蔵神社の春祭り。桜の飾りを付けた総輪島塗、高さ5mの曳山が輪島の街を練り、春の訪れを祝っていました。しかし、地震によって曳山をしまっていた倉庫が倒壊しました。
能門さん:
「半年以上外に置いてあったので、日が当たったところはこういうふうにやっぱり劣化してしまっていて…」
稲垣アナ:
「先ほどの本殿の(再建の)メドも立っていないという事でしたがこちらの山車はどうですか?」
能門さん:
「こちらの方も、直すためには山を入れる倉庫を再建して、その中に入れて職人さんが作業をするという…倉庫を立てる計画もまだ立っていない状況なので、お祭りにはこの山車を出すことができない状況です。」
こうした中、能門さんは地震発生直後から地元の料理人たちと協力し、神社の境内などで炊き出しを行ってきました。
さらに、県内・県外のボランティア団体と連携して様々な試みを続けてきました。その団体の一つが「コミサポひろしま」
去年1月初めから重蔵神社の境内に拠点を設け、専門ボランティアとして道路の啓開や屋根の修繕など地域の復旧・復興に尽力してきました。
小玉さん:
「『駐車場の広いところ、どこかないですか?』と聞いたら『それならウチを使ってください』とここを使わせてもらって…最初は車が3台ぐらいと言っていたのがもう半分以上借りてて…『コミサポ村』みたいになってたんですよね、ここ。それはすごく助かりましたし、拠点として使わせてもらったことには本当に感謝しています。」
「じゃ行きますよ3、2、1…」
コミサポひろしまは、1年半の任期を終え、6月末で輪島を離れました。支援団体が少しずつ能登を離れていく中、能門さんはこれまでに学んだノウハウを生かし、新たなボランティアセンターを立ち上げました。
能門さん:
「被災者で活動している団体が連携を組んで『輪島支援共同センター』を立ち上げて…私も含め、生活再建とか生業再建、まだ災害の復旧段階なのでそういった皆さんのニーズに社協さんと一緒に対応できたらというので…出来ることは少ないんですけど少しずつ復旧を終えて復興に向けて行きたいなと思っています。」
自らの神社の再建が進まない中で地元住民のために尽くす。そこにはこんな思いがありました。
能門さん:
「お祭りというのは、神社だけではできないことなので…毎年地域の方に協力して頂かないとお祭りが出来ないという事もあって、地域の方が困っている時には何かできればと…」
去年の輪島大祭。
「神輿が社を出ました。これから輪島市内を巡行します」
去年8月に行われた輪島大祭。例年は輪島市内4つの神社が4日間に渡ってキリコ祭りを行いますが、去年は地震の影響で重蔵神社のみが規模を縮小してキリコの巡行を行いました。
しかし、人々の顔には笑顔が…能登の人々にとって「まつり」は欠かせないもので、それは地域の人々と共に作り上げるもの。神主の家系に生まれた能門さんはそのことを誰よりも分かっています。
能門さん:
「昨年の震災の直後は、全くお祭りはできないと思っていたんですけど、地域の方たちからお祭りをすることで震災前に繋がっていた街の方々と交流ができることと、新たに外部の方たちと交流ができるというので(やってほしいと)。色んな方に協力して頂いて(お祭りが)出来たのが本当に奇跡ですね。」
稲垣アナ:
「復興2年目のお祭りという事になるんですが…」
能門さん:
「お祭りを継続するということで、私たちとしては輪島の文化を後世に伝えるというのが重要になってくるので…。そういったものを通して地域の方と交流してなるべく早く復興に向えるように皆さんと力を合わせていきたいと思っています。」
さらに今年は…
能門さん:
「輪島市内の各神社も、被災している状況の中でお祭りをするのは本当に大変なことなので、重蔵神社以外の氏子さんが参加をすることも私たちの方は受け入れをするという形で…出来るだけ多くの方と一緒に、多くの方たちがお祭りを通して復旧から復興への前向きな力になればいいなと思っています。」
稲垣アナ:
「復興2年目の輪島大祭、私自身も楽しみにしています。これからも宜しくお願いします。」
能門さん:
「はい!宜しくお願いします。」
重蔵神社の拝殿前に鎮座する一対の狛犬。これは1910年、明治43年に輪島市河井町を襲った大火で重蔵神社が全焼した際焼け残ったものなんだそうです。この火事の時も、当時の宮司は神社の被害を顧みず住民のために尽くしたという話を能門さんは幼い頃から聞いて育ったそうなんです。能登人の思いですね。
今年の輪島大祭は8月23日に開催されます。今年は現時点で去年の9基を上回る13基のキリコの巡行が決まっています。また氏子以外のキリコの参加も今後見込まれるという事で、輪島人の心を熱くする輪島大祭は大きく盛り上がりそうです。