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避難所を出てみなし仮設のアパートへ…新生活スタートも課題は様々「前に進めない」

避難所を出たあとに被災者がどこで生活するか。

ひとつは仮設住宅、ひとつは賃貸型応急住宅。

これがいわゆる「みなし仮設」と言われるもので、自治体が民間のアパートなどを借り上げて被災者に暮らしてもらう形です。

そして県営や市営などの公営住宅となります。

いずれも避難所に比べればプライベートも守られ、自由に暮らす事ができます。

今回イットでは、みなし仮設に移った夫婦を取材。

そこにはようやく避難所を離れたにもかかわらず直面する大きな課題がありました。

堂下政弘(どうした・まさひろ)さん(70)と妻・美智子(みちこ)さん(66)。

能登半島地震で孤立集落となった輪島市・南志見(なじみ)地区から集団で避難し3月から津幡町のアパート、いわゆるみなし仮設に移り新たな生活を始めました。

稲垣アナ:
Qこの家にある物はどこでどんな風に調達を?

美智子さん:
「西田さんが私らに「持ってってくれ」「どんどん使ってくれ」って。そのおかげで電子レンジとかお茶碗とかも親戚からもらったのもあるんですが、コップ1個さえ無かったもんで。助かりました。」

これらの日用品や家電、実は…

記者:「洋服などがズラッと並んでいるこの場所、実は小学校の体育館。支援物資の拠点となっています。こちらには、冷蔵庫や洗濯機など大物家電も置かれています。」

金沢市の四十万(しじま)小学校に3月24日まで設置されていたこの場所。

金沢に集団避難した人たちをサポートしてきた地元のグループが、様々な支援物資を1つの場所に集めました。

みんなの畑の会 西田敏明(にしだ・としあき)代表理事:
「私が仙台にいた時に阪神淡路大震災を体験しましてね、そこで支援させて頂いた。そのあと、金沢に戻ってから東日本大震災が起きました。その時、私の関係者が4人亡くなったり、息子が津波に巻き込まれたり、毎週通いながら向こうの支援をしながら色んな課題を感じながらやってきて万が一災害が起きた時にはこういうことが必要だなということで準備した。それと人の準備ですね」

この支援物資が、故郷を離れ、金沢などで新たな生活を行う被災者の助けになっています。

利用者:
「足の散歩に来ました」
「こたつももらったし、カーペットももらった」
「助かるぐらいじゃないわいね。食器も子供は1つずつしか買ってくれないけれど、ちょっと入れようと思ったら必要やし、タッパーももらったりね。色々もらいました」

西田さん:
「日本はどこで被災者になるか分からない状況」
「仮に森本・富樫断層で起こった時に被災者は何十万になるんですかと。その準備が出来ていないわけですから、そういうことを考えるとお互いに助け合いの気持ちを持って自助・共助・公助の観念から言ったって生きていかなければいけない」
「冷たいかもしれませんが、今回なってしまったことはどうしようもないわけですから、これを逆に使ってどうやったら次、新しい能登を作れるかという風に前に一緒に支援する我々も一緒になってやるということで長い活動になると思う」

堂下さん夫妻にとってもこの支援が無ければみなし仮設に移るという決断はできなかったかも知れません。

堂下さん:
「避難所からの支援は何も無いですよ」
稲垣アナ:
「着の身着のまま?」
美智子さん:
「正直言えばそうですね。(避難所)出た方が余計お金いるもんで水の1本も欲しいしね」

避難所を離れ、みなし仮設に移る人たちが直面する問題。

それは生活に必要なものは全て自分たちで揃えなければならないことです。

水も電気も全て自分達でまかなわなければならないのです。

更にこんな問題も…

美智子さん:
「ストレスも無いし快適なんだけれど、ちょっと寂しい。みんなと離れちゃったから。涙出る…寂しいすることも無いから…」

稲垣アナ:
「うまそうっすね」

美智子さん:
「ごった煮です」

実は美智子さん、避難所に居たときは、同じ南志見地区の人たちと一緒に炊き出しなどに参加していました。

美智子さん:
「何もしなくていいのはつらいんですよ、みんな朝から晩まで働いてきた人たちだから。だからこんな風にみんなで集まって、何か作ったりするのがすごいみんなも生き生きとして楽しい」
「ほらみんなうんうん言ってる」

みなし仮設に移ったことで、夫婦での時間は増えたものの近所の人たちと離れ離れになったことが辛いと言います。

堂下さん夫妻、地震が起きるまでは、美智子さんが地元の野菜で作った漬物などを販売し、政弘さんは、道の駅を運営する会社の役員として働いてきました。

稲垣アナ:
Q仕事も家もどうしようかなって感じですか?

堂下政弘さん:
「それが今、どうしたら良いんかなと思ってずっと考えてるが方向性が見えないので…」
「行ったり来たりも時間かかるしお金かかるしね、キツイんよ」
「そんなこと言ってられないけれど、千枚田はずっと前から携わって愛着あるし何とか直そうと思っとるんで」

ただ、政弘さんの考えが煮え切らないのにはある理由が…

堂下政弘さん:
「罹災証明で引っかかってて…」
「1階の天井まで土砂が入ってきているのに、準半壊という結果だったので、準半壊だと行政から一切お金出ない。自分で家を潰して廃棄するのかどうなのか判断しないと。一切お金出ない」

堂下さんは二次調査を要望しましたが外観から判断する一次調査と違い二次調査は1軒1軒中に入って調査するため順番が回ってくるまでまだまだ時間がかかるようです。

堂下政弘さん:
「再調査の結果が出ないと前に進めないんです」
「仮設住宅も申し込んでるんです。戻りたい気持ちはいっぱいあるんですが、戻っても自分のなりわいとか全て震災で潰れて」
「仮設住宅できて入っても意味ないもんな…全部壊れちゃって行ってもしゃーない」

妻・美智子さん:
「そんなこと言ったって…」
堂下政弘さん:
「でも、みんなには会いたいしな…」
妻・美智子さん:
「目の前海で育ってきたんで、津幡にいても仮住まいは抜けない…やっぱり南志見に帰りたいな」

ようやく避難所を出られても被災者を苦しめているのは、3カ月たっても依然として見通せない「未来」と言う現実です。

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