石川テレビ

石川テレビ 8ch

【放送日】2022年5月28日(土)13:55~15:30

石川県知事の谷本正憲は7期にわたり男性中心の県庁組織を束ねてきた。在職期間が現職最長に及ぶなか、職員はしきりに谷本の顔色を伺い、谷本は緊張感を欠いた言動を繰り返すようになる。コロナ禍に「無症状の方は石川県にお越しいただければ」と失言したかと思えば、「4人以下での会食」を呼びかけた裏で自身は90人以上で会食をしていた。権力を手中におさめる時が長くなるほど、仕える者は忖度の度合いを強め、為政者は傍若無人になっていく。ムードに流されやすい社会は、押し寄せる矛盾にも慣らされる。そんなムラで、谷本は長期県政を築き上げた。

金沢市内で暮らすイスラム教徒の松井誠志さん一家は、2001年の米中枢同時テロ以降、根拠もなくイスラム過激派との関係を疑われてきた。同調圧力の強い社会から受けてきた理不尽な差別。来日して22年の妻ヒクマさんは、永住権を取得したものの帰化はしていない。「国籍を日本に変えても外国人。日本では顔で判断されるから」。厳格なムスリムの目は、ムラ社会の矛盾をえぐりだしていく。

谷本による長期県政は28年で終焉を迎えた。8選出馬に前向きに見えた谷本の機先を制したのは、谷本の選対本部長を務めていた衆議院議員の馳浩。過去2度の知事選前には谷本の多選批判を展開し、対抗馬の擁立を画策してきた。「新時代」をスローガンに掲げ新知事となった馳だが、22年前の衆議院初当選時に掲げたのも「新時代」だった。

28年間カメラが捉えてきたのは、移り行く時代と変わらぬムラの男たち。「谷本vs馳」の権力闘争を紐解くと現れるキングメーカー森喜朗。権力移譲の過渡期に描く栄枯盛衰のコメディーは、この国の「男村」を動かしてきた正体を浮かび上がらせる。