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78歳の“年金コレクター”が加賀市に私設美術館オープン 半世紀にわたる生きがいが形に

10月24日土曜日、石川県加賀市に私設の美術館がオープンしました。館長を務めるのは「年金コレクター」を称する男性。約半世紀にわたる「生きがい」が形となった美術館に込めた思いとは?

10月24日、加賀市動橋町にある美術館がオープンしました。
山本冬彦さん:
「すごいドタバタで…。よし、これで全部一応貼ったかな…」
館長を務めるのは小松市出身の山本冬彦さん(78)。展示されているのはすべて山本さんのコレクションです。
山本さん:
「ここは私設美術館だから、館長の思いとして、情報なしでいかに自分で考えたり感じたりするという場にしたいと思っている。そういうのは公立の美術館では絶対にできないことなので、ちょっと前からやってみたいなと思っていた」

山本さんの自宅は千葉県市川市にあるマンションです。
山本さん:
「よそは知らないけど、どんな風になっているのか。僕のところは絵がないとなんか寂しい」

大学卒業後、東京の大手保険会社でサラリーマンをしていた山本さん。購入したマンションの壁が殺風景だったことから、29歳の時に初めて絵を買うことに。
山本さん:
「当時の月給くらいだったんで、やっぱり高いと思って、どうしようかって迷っていたら、第一次のオイルショックのすぐ後だったんです。絵が全然売れない時期だったと思うんですね。お客さんはサラリーマンでしょうから、月賦でいいと言われた。それで月賦で1年間、毎月払うということで買ったんです」

月賦を払うため毎月、画廊に通ううち、絵画の魅力に取りつかれた山本さん。ジャンルを問わず多くの作品を集めるようになると、美術界で「サラリーマンコレクター」として一躍有名になりました。

山本さん:
「あえてサラリーマンとつけたのは、普通コレクターというとお金持ちとか企業とかを想定するじゃないですか。そういう人しか買えないものだと思われているところを、サラリーマンでも買えるっていうのを強調したかったんで、あえてサラリーマンコレクターってしたんですね。今は年金コレクターですけど(笑)」

自宅とは別に、作品を保管していた場所が東京・銀座にあります。かつてアパートとして使われていた築94年のビル。3階の奥にある部屋が、山本さんの書斎兼コレクションルームです。
山本さん:
「銀座の隠れ家って書いてあるけど、家にも隠れ家で、第3の場所だって、そんなの(家族に)言ったら絶対にNOって言われるに決まっているじゃないですか。何を考えているのって言われるでしょ。だから黙って…」
ここを借りたのは、まだサラリーマンとして働いていた約30年前。一時期は300点ほどの作品が保管されていたそうです。
山本さん:
「この部屋、ほとんど壁が見えないくらい(作品が)積まれて。来るたびに、ここからここまでしか通り道ないという感じでした」

オープン1カ月前。作品の搬入が完了しました。
山本さん:
「先週、全部、あの辺とかいっぱいあるけど、4トン車で運んだんです。油絵と日本画と、こういうのは全部立体ですね。いろいろあります」
今回、美術館として活用するのは、200年以上前の江戸時代に建てられたとされる酒蔵です。
山本さん:
「ロビーからここが第一の蔵と言ってるんですけど、展示会場として平面絵画なんかを展示するメインになるかなと。こっちが第2の蔵になるんです。前はここつながっていないのをつなげたんですね。こういう壁が荒々しい、柱と石が全部見える。これ自体を見てもらったらいいかなと。ここが奥座敷で、この辺からは襖絵が、明治時代に京都とか金沢の絵師が描いた。最初はここ全然考えてなかったんですね。でも、これ面白いんじゃないのって言って、こっちも全部観てもらえばいいんじゃないかなということで」

いちコレクターの山本さんが美術館の館長になったのは、友人を介して、酒蔵の改装を担当した設計士と出会ったことがきっかけでした。
山本さん:
「作品がいっぱいあるのを田舎のどこかに預けたいと。そしたら、その設計の人が、ここのオーナーに聞いてみるっていう話で。それがポンポンポンといって、この蔵を山本さんに貸すから、山本さんのコレクション館みたいにして自由に使ったらという話になった」

美術館の目玉の一つは、山本さんが月賦を払って最初に買った絵。数年前に亡くなった妻にも内緒で買ったそうです。
山本さん:
「最初に買った時は、家に持って帰らないといけないじゃないですか。それで言い訳しなきゃいけないから、女房に『お前の子どものころに似ているな』みたいなことを言ってごまかして。値段はもちろん言わないし。途中からはもうあきれ果ててる。本当に悪いと思いますけどね」

オープン2日前。

山本さん:
「よいしょ。うわー、これ何だ。開けるのが楽しみで。何が出てくるか、自分で買っているはずなのに。これは一番最近買ったやつだ」

「ここに刺すんだったかな…」

作品の配置も山本さんが自分で考えます。

山本さん:
「こういうのを出してから、どこに並べるかっていうので」

モダンな作品を1つのコーナーに集めてみることにしました。

山本さん:
「今までは、展示できるとしても家の中かなんかで限られているでしょ。何点かに。今回はこんな広いところだし、何をどう並べるか」

さらに2階の展示室には、こんな思い切った展示も。

山本さん:
「これだと、ライトがちょうど月に当たるね。後ろの壁の色とも合うし。すごい。あんまり何も出さないでおくかな。建物とあの作品だけで」

そして、私設美術館ならではの最大のこだわりが…。

山本さん:
「普通の美術館って、作家の下に必ずプロフィールとか書いてあるじゃないですか。何とか大学出たとか、賞をもらったとか。絵が問題だとするでしょ。解説は答えなんですよ。日本の美術館って、みんな問題と答えを一緒に展示してあるんですよ。そしたら誰だって答え先に観るじゃないですか。だから、素直に自分の感性とか好みとかを観てもらうためには、一切情報なしでいいと。自分が意外なこういうのが好きだったという、自分探しみたいなそういう見方をしてもらう美術館にしたい」

そして迎えたオープン日。

山本さんが集めた1300点ほどの作品のうち、今回展示されたのは約50点。オープン日は年齢問わず多くの人が訪れました。

来館者:
「近代の絵から昔の日本画風の絵までジャンル問わず置いてあるので、自分がどういうタイプの絵が好きかとか、そういうのも観ながら感じていました」
「まず建物にびっくり。思い入れが感じられて、心がほっこりしました」
「いろんなコレクションがされてて、感心しています」

今後は、定期的に作品を入れ替えるほか、学生の作品展示やイベントの開催などの構想も練っています。

山本さん:
「サラリーマンでよく集められるねっていうけど、車持ったりゴルフとかね、酒飲みも行かないし、ほとんどそういうのをしないでたまたま絵に1点集中しただけで僕はたまたま絵だけど音楽でも演劇でも何でもいいんですよ自分が好きなものに何十年間そうした人は定年後も活き活きしていますよ」

50年にわたる生きがいが形となった唯一無二の美術館。山本さんの情熱はまだまだ尽きません。

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