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1枚の葉に宿る優しい物語 葉っぱ切り絵作家リトが語る創作の源泉
葉っぱを使った切り絵の世界が楽しめる展覧会が17日から石川県金沢市内で始まりました。初日の会場を取材し制作者の思いを伺ってきました。
金沢エムザ3階に、小さくも豊かな世界が広がっています。葉っぱ1枚をキャンバスに、動物たちが語り合い、旅をし、歌を歌う。切り絵アーティスト・リトさんの展覧会が、金沢で初めて開催されました。今回は会場を歩きながら、リトさんにその創作の秘密や作品への思いをたっぷりと伺いました。
会場入り口付近には、葉っぱの切り絵を始める以前に制作していたボールペン画やスクラッチアートも並んでいます。リトさんがなぜ「葉っぱ」という素材にたどり着いたのか、まずそこから聞かせてもらいました。
――葉っぱを使った切り絵を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
リトさん:
紙の切り絵もちょっとやっていたんですけど、なかなかプロの方に追いつくのは難しいなと思って。何か身近な場所にあるものでちょっと作品が作れないかなと思っていたんです。そうしたら、海外の方が葉っぱを使った切り絵を作っているのをたまたまネットで見かけて。見よう見まねでやってみようと思ったら、やっているうちにできちゃったみたいな感じで。
――やってみたらできてしまった、ということなんですね。センスがあったんでしょうか。
リトさん:
いや、ないんですけど(笑)。何回もやっているうちにちょっとずつ形になっていった、という感じですかね。
会場には実寸大の作品と並んで、拡大写真パネルも展示されています。魚を釣る人物や小さな子どもの姿が細やかに切り取られており、思わず目を近づけてしまいます。
――作品を拡大したパネルを見ると、本当に細かい表現に驚きます。実際はどのくらいの大きさなのでしょうか。
リトさん:
指のサイズで比較してもらえれば分かると思うんですけど、爪くらいのサイズの穴をちっちゃく開けて作っているんですよ。
――道具はどのようなものを使っているのですか。
リトさん:
ほんとにシンプルで、デザインナイフという切る道具を1本と、下書き用のペン、それとカッターマット。その上に葉っぱを置いて、線に沿って切っていくという、ほんとにシンプルな感じです。
――下絵から完成まで、どのくらいの時間がかかりますか。
リトさん:
早ければ2時間以内でできてしまいますし、時間がかかるものだと7、8時間ずっとやっています。
――すごい集中力ですね。私だったら5分も持たない気がします。
リトさんの作品には、フクロウの先生がリスに算数を教えているもの、動物たちがカエルの合唱を聞いているものなど、思わずクスッとしてしまうストーリーがあります。そのアイデアはいったいどこからやってくるのでしょうか。
――作品のアイデアはどのように生まれるのですか。
リトさん:
私も必死に、今日が何の日かって調べてみたりとか、今だったら夏になってきたから扇風機とか風鈴で考えてみるとか。あとは子どもの頃の思い出だったりとか、日常のいろんなところにあるものをかき集めて、なんとか形にしていくという感じです。
――日々の出来事をメモしたりもするのでしょうか。
リトさん:
そうです。だから歯磨きしながら、「あ、歯磨きで何か作れないかな」とかね。
――日常のあちこちにアイデアが潜んでいるんですね。
会場の一角には「葉っぱの小旅行」シリーズが展示されています。各都道府県の名所や文化をぎゅっと1枚の葉っぱの中に詰め込んだ作品群で、今回はもちろん石川県版も登場しています。
――「葉っぱの小旅行」シリーズは、実際に訪れた場所を描いているのですか。
リトさん:
そうですね。ここに展示してあるところは、大体行ったと思いますね。今回は石川県の作品も作って、こちらに展示してあります。
――金沢駅の鼓門に、兼六園の琴柱灯籠も入っていますね。地元の人間としてはとても嬉しいです。石川の要素をどのように盛り込んだのでしょうか。
リトさん:
石川県のイメージするものや有名なものをいろいろ調べて、この小さい葉っぱの中に入れられないかなと思って。実は5つ入れてあるんですよ。それを探す楽しみもあるっていう。
また、会場には「ゴーゴーカレー」をモチーフにした作品も展示されています。ゴリラのトレードマークまで細やかに表現されており、地元に向けたリトさんの遊び心が感じられます。
会場には観るだけでなく、体験できるコーナーも設けられています。穴から覗くと葉っぱの向こうからパンダと目が合うコーナーや、虫眼鏡で作品を間近に観察できるコーナーなど、子どもから大人まで楽しめる仕掛けが随所に。
虫眼鏡で作品に近づくと、動物の目や足と足の隙間、葉脈のきめ細かな筋まではっきりと見えてきます。肉眼では気づかなかった世界が、そこに広がっています。
――最後に、会場を訪れる方々にどのような雰囲気を楽しんでほしいですか。
リトさん:
私が作るアートというのは、難しい知識がなくても、お子さんからお年寄りの方まで、誰でも楽しめるものになっていると思うので。作品を見て、「この子たち何のお話してるのかな」とか「どこに行くのかな」とか、自由にストーリーを膨らませながら楽しんでいただければなと思います。
今回が金沢初開催となるリトさんの展覧会には、約80点の作品が並んでいます。ほとんどの作品はアートパネルとして販売もされているとのこと。お気に入りの1枚を探しながら、葉っぱの中に広がる小さな物語と、ゆっくりと向き合ってみてはいかがでしょうか。
会期は来月16日まで、金沢エムザ3階にて開催中です。