石川テレビ

石川テレビ 8ch

石川県内ニュース

能登半島地震から約5カ月…高校生の本音と「書道」で伝えたいこと

能登町役場に掲げられた「復興、再生」の文字。記憶にある方も多いのではないでしょうか。この作品を書いたのは能登高校書道部です。
地震の発生からまもなく5カ月。今、新たな作品に挑んでいる彼女たちが伝えたい「本音」と「現実」とは。

「復興、再生」「みんなで前を向いて進む」
能登半島地震の発生から約3週間後、地域を元気づけるために作られた作品です。
「作品を見てくれた被災者の方々に前に進むきっかけになってくれればな」と話すのは能登高校書道部です。
当時は断水が続いていたため、筆は雪や湧き水で洗ったといいます。
不便な生活の中でも明るくふるまう部員たち。
書の中にも前向きな言葉が並びます。

さなさん:
「自分たちも前を向いていない中でボランティアの方への感謝とかみんなに前を向いて頑張ろうという気持ちで前向きな言葉だけを入れた」

あれから4カ月。
町内の断水は解消されましたが通学路は傾いたまま。
部員たちは復興が思うように進まない現実を見てきました。

府玻先生:
「普段すごく元気にしていて楽しくやっているんですけど複雑な思いがあるんだろうなと感じることは多々あります。」

指導者の府玻(ふわ)先生が見せてくれたのは、先月上旬に部員たちがつづった率直な気持ち。

「先が見えない不安」「自然災害やから、誰も悪くないから」「前向かなやっとられん」

府玻先生:
「本当に本音だな、けどなかなか口に出せない。辛いですけれども自分たちのおもいを受け止めてみよう、受け止めないと前に進めないんじゃないかなと」

部員たちは新しい作品を作っています。
東京で開かれる日本赤十字社のイベントで書道パフォーマンスを披露することになったのです。

さなさん:
「どんどんみんなの記憶から薄れていっているような感じがして。全然なのにもう大丈夫みたいな感じになっているのがすごい悲しくて。この間の役場の作品みたいにきれいなことだけじゃなくて被害が大きいとか現実をみんなに伝えたいと思った」

「変わり果てた家と町を見て声が枯れるまで泣いた」
この言葉を考えたのは府中美音(ふちゅう みお)さん。

みおさん:
「わってなって全部(岩が)落ちてきて。家の半分に石も入ってます」
Qここに住んでる?「仮設はいるまでは住んでて荷物運び次第仮設に行くって感じです」

美音さんの自宅。何とか寝る場所は確保できていますが、風呂は入ることができません。

みおさん:
「自分の壊れた家とか壊れていく街を見て、その現実をちょっと経って見てみたらなんかめっちゃ泣いて。仮設にいったらお風呂あるしこの家よりは絶対安全やけどやっぱり17年過ごした家なので怖いけどここにいたいというなんか複雑な気持ちです」

部員の中には幸い、自宅の被害が少なかった生徒もいます。

さなさん:
「うちは全然家もあるし水もお湯も出て全部あってうちだけ申し訳ないなってたまに思ったり、ぜんぜん被害もないし…」

橋本沙奈(はしもとさな)さん。沙奈さんも一方で複雑な思いを抱えていました。

さなさん:
「一緒に避難するときにネコちゃん逃げちゃって…」

飼い猫のビビくんが地震で逃げ出し、今も見つかっていないのです。

今月で3才になったビビくん、まだ誕生日も祝えていません。

さなさん:
「人が生き埋めになっとるときにネコかって思うかもしれんけど…私からしたら弟みたいな感じだったので、私が抱っこしてて逃げちゃったので家族にめっちゃ申し訳なくて…」

それぞれの大切なもの。日常が一変した、高校生たちの4カ月半。

「これが本音、これが現実」

迎えた本番当日…およそ1600人が見守る大舞台。

「能登高校書道部です。一筆ご披露いたします!」
『お願いします!』
見せる演技で何を表現しているかスーパーで説明真ん中に、一際大きく書いた言葉。

それは…

「人が薬、ひとぐすり!」

さなさん:
「たくさんの人に声をかけてもらい、支えられ励まされてまさしくひとぐすりのおかげで元気と笑顔を取り戻し前を向いて未来を考えることができるようになりました」

みおさん:
「自分たちのパフォーマンスで泣いてくれる人がいて感動してもらえるのも実感できたので自信にもなったし嬉しかったです」
さなさん:
「私たちは大変な中にいるんだよと知ってもらうことで他の方たちも助けになってくれるかなと思って少しだけ気が楽になったような気がします。」

向き合う現実も抱えた本音も違う部員たち。

だからこそ、これからなんだって書くことができる。未来は輝いている。

最近のニュース