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消防団の活動に向かおうとした矢先…家屋の下敷きになり46歳男性死亡 叔父「任務の気持ちあったと思う」

15日、能登半島地震の犠牲者の氏名が初めて公表されましたが、この中に自らの責任を果たそうとして命を落とした消防団員の名前がありました。

輪島市門前町の高根尾地区では27あるうちの半分近くの家が全壊し、地震直後は瓦礫に道を塞がれ、住民らが協力して道を開けました。

稲垣勝治さんは今回の地震で、甥の寿さん(46)を失いました。寿さんは倒壊した家屋の下敷となり、命を落としました。

稲垣勝治さん:
「みんなをまとめてくれるし、働くしよ。人の面倒見がよかったわ、本当に。(寿さんが)亡くなって俺も悲しい。こんな状態であの床に挟まっていた。2階がドンと落ちてきて、梁のところに挟まって。母親が『寿が挟まった、挟まった、出てこられん』って。名前を呼んだり『寿、寿、頑張れ』って(声をかけた)。そういう状態だった」

家の一階部分が潰れ、寿さんは落ちてきた2階部分の下で生き埋めになりました。家族や地区の人たちがチェーンソーなどで柱を切断するなどし、およそ1時間半後に救出しましたが、間に合いませんでした。最初の地震で母親と祖母を外に逃し、自分は家に残った寿さん。ある責任を全うするためでした。

稲垣さん:
「任務として俺は行かないかんという気持ちはあったと思う。みなさんに協力しないとと思って服(消防服)に着替えて、出ようとしたときに挟まった」

寿さんは消防団員で、地震が発生し消防服に着替えていた時、震度6強の地震が襲いました。

稲垣さん:
「ここでベルトを通す暇もなかった。消防服は着ていたけどね。残念で仕方がない。帰ってこられるものなら帰ってきてもらいたい。ところがそんなわけにはいかんしな」

寿さんの義理の兄・坂下浩之さん:
「一番つらいのは(僕に)7歳の子供がいるんですけど、急に地震でおじさんが亡くなったことで心にトラウマが起きないかが心配です。よく何かと可愛がってもらって、船とか『乗るかー』って、2人で乗っている写真もいっぱいあるくらい仲が良かったです」

誰にでも優しく親切で、地域の祭りや行事にも積極的に参加していた寿さん。若手のリーダーとして、地域をまとめていた寿さんを失った悲しみは、家族だけではありません。

高根尾地区の区長 中橋政久さん:
「彼は地域にとって、若い世代にも年配の世代にもいろいろ接していたが、大変人柄が良い、付き合いが良い、面倒見も良い、ものすごく人間的にできた人でしたので。大事な人を亡くして、この地域を守っていかないといけなんですけど、その一角が崩れたということで大きな損失になったという気がします」

高根尾地区の区長を務める中橋政久さんも、寿さんに地区の将来を託していました。

区長の中橋さん:
「もし消防団員でなかったら、着替えることもなかっただろうし、彼が自分で選んだ道で亡くなられたということは本当に残念だなと思います。間違いなくこの地域をまとめて頂けるような人材だったと思っていたし、(今後)私らの地域を守るというのは彼じゃなくて、地域全体で守り、協力していかざるをえないんだろうなという気がします」

寿さんは過疎や高齢化が進む地域にとって宝でした。能登半島地震が奪ったものは計り知れません。

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