リフレッシュ法律相談室
- 特別版
ご近所トラブルや詐欺商法など、日ごろの生活の中で起きる思わぬトラブル!
法律のスぺシャリスト 池田昇右弁護士がお答えします!
CASE①「事故で腰痛が悪化」
事故が原因で悪化した腰痛。治療費の全額を相手に請求することは・・・
1:請求できる 2:請求できない
正解は・・・請求できない
まず、事故におけるケガについて治療費などを請求できるのは
そのケガが交通事故と因果関係がある、
つまりそのケガは当交通事故によって生じたものであるといえなければなりません。
今回のケースだと医者から交通事故が原因で腰痛が悪化したと言われていますので
因果関係は認められる可能性が高いと考えられます。
しかし注目すべきポイントは、“もともと腰痛があった”というところです。
そのせいで通常の人に比べ、腰痛がひどくなってしまっていると言えます。
このような場合、全額請求をすることが難しくなってきます。
これを「素因減額」というのですが全額の請求を認めると不公平になる場合には
被害者にも原因があるということで、治療費などの額が減額される可能性があります。
今回のケースでは相談者が椎間板ヘルニアを患っていたので
素因減額が認められる可能性が高く全額請求ではなく、
一部自己負担になる可能性があります。
CASE②「事故が原因で婚約破棄に」
事故が原因で会社を解雇され、さらに婚約破棄にまでなってしまった
婚約相手に慰謝料を請求できる?
1:請求できる 2:請求できない
正解は・・・請求できる
婚約というのは、いわゆる契約のようなもので
仮に婚約を一方的に破棄された場合には、契約違反として慰謝料を請求できます。
しかし、婚約破棄に正当な理由がある場合には
相手方に慰謝料を請求できません。
婚約破棄の正当な理由の具体例としては
① 異性関係(例:婚約者以外の男女交際があった)
② 重要な事情についてのウソ
(例:職業を偽った、実際とはかけはなれた収入額を言っていた)
③ 回復不能な病気
④ 経済状態の極度の悪化
⑤ 家族との協調関係が持てない
⑥ 暴力・モラハラ
などです。
会社を辞めたことで婚約破棄だったので
④経済状態の極度の悪化 に該当しないのかという点ですが
今回は、収入の低下があくまで一時的であり、
改善の余地があるので極度の悪化と断定することはできません。
年齢や職種などから見て再就職が十分可能であり
これまでに近い収入を確保できそうであれば、
婚約を破棄する正当な理由とはならない可能性が高いです。
あくまで、諸事情を総合的に判断して、婚約破棄が正当化されるかが決定されますが
今回のケースでは、婚約破棄の正当な理由とならないため
慰謝料を請求できるといえるでしょう。
一方、婚約破棄に対する慰謝料を
事故を起こした人に請求するのは難しいですね…
普通は交通事故と婚約破棄は関係ないよね、と判断される可能性が高いです。
ケガ自体の慰謝料請求は当然できますが、婚約破棄については難しいでしょう。