石川テレビ

石川テレビ 8ch

石川県内ニュース

【能登人を訪ねて】♯109 海水を飲み水に空気からエネルギーを 珠洲で始まった「世界初」の挑戦

おととしの地震で大きな被害を受けた石川県珠洲市宝立町。この地で今、金沢大学を中心に「未来のまちづくり」がスタートしています。聞けば聞くほどワクワクするアイデアの数々。発起人は地元出身の大学職員です。描く未来図を聞きました。

稲垣:
珠洲市宝立町に来ています。こちらでは今、金沢大学を中心としたあるプロジェクトが進行中です。地元住民を巻き込み、一体となって目指すものとは。

珠洲市宝立町。ここで、公共のインフラに頼りきらない、いわゆる「オフグリッドのまちづくり」が始まっています。

稲垣:
よろしくお願いします。

金沢大学・枡儀充事務室長:
こんにちは。いつもありがとうございます。

今回訪ねたのは、金沢大学能登里山里海未来創造センターの枡儀充事務室長。今回のプロジェクトの発起人の1人です。

稲垣:
今ここの場所では何が行われているんですか?
枡さん:
実は金沢大学で、この珠洲の、この綺麗な土地で新しい未来を作っているんです。空気中の二酸化炭素からエネルギーを作る、海水から飲める水を作る。そういうプロジェクトをここで展開しようとしています。
稲垣:
できるんですか、そんなの?
枡さん:
楽しいじゃないですか!震災のあの状況を考えると、水がない、電気がない。何とかならないかなってやっぱり思うじゃないですか。それを我々が具現化しよう、実現しようという動きになります。

枡さんは2024年の地震の体験を踏まえて、「公共のインフラが頼れない状況でも生活できるまちづくり」を地震発生直後に思い立ちました。それが、金沢大学と信州大学などがタッグを組んだ「未来知MITSUKEプロジェクト」の始まりでした。このプロジェクトでは、地元住民が提供した土地などを活用しています。

地元の人とともに歩みたい。そんな思いで取り組んでいるのが「畑作り」です。

枡さん:
実は、皆で農地を作ろうとしています。ここの能登の皆さんには、畑をなさったりという楽しみも存在しています。であれば、新しい知見を、水を使いエネルギーを使いながらの農業のやり方ってこういうのあるのかなというのをプロジェクトとしてやってみる。それがうまくいけば、じゃ皆さんでやりましょうってなるじゃないですか。そういう、地元と連動しながら新しい食べ物作りをやってみようかなというので今、まさに着手したところです。

枡さん:
多田さん。こんにちは。
多田進郎区長:
おはようございます。

プロジェクトを応援しているという地元の方に出会いました。

稲垣:
最初こんな話が来た時どう思いました?
多田さん:
想像もつかなかった。最初は『地元のばあちゃんたちが一緒に何か活躍できるようなプロジェクト』と聞いていて、やっぱり町が活性化するにはすごく大事な施設かなって思いました。
稲垣:
なるほど。で、お母さんは…
枡さん:
元町さんはお隣で畑をされている方。で、仮設の1階と2階にそれぞれ住んでいる。
稲垣:
若い子いっぱい今日も来て、こうやってトラクターも出してたりとかするけど、見とられてどうですか?

農家の元町さん:
いいわいね。一人でポツンと仕事しとるよりも…。
稲垣:
いつも1人で畑しとるんですか?
農家の元町さん:
そうや。
稲垣:
そりゃ寂しいもんね。

多田区長:
枡さんのお父さんの家族もそこで畑を…その辺でやって…
稲垣:
もしかして枡さんは…
枡さん:
ここ、地元の人間です。もう小さい頃から多田さんにはお世話になって。
稲垣:
能登人なんですね。
枡さん:
能登人です。金沢に住んでいますけど、根っからの能登人だと思っています。

多田区長:
お祭りの時は必ず帰ってきて、一緒に山を引いたり…

枡さんは宝立町の生まれ。地震発生時は金沢にいたものの、変わり果てた故郷を見て愕然としました。

枡さん:
言葉にならなかった、最初…。そういう感じですかね。やっぱりああいうのを見ると…言葉に詰まるってのは本当、これかなと思いました。涙も出ませんでした。
稲垣:
そうですよね。だって小さい頃から育ってきたふるさとの町ですもんね…ふるさとが変わり果ててしまったところは、すぐそこまで切り替えられなかったですよね。
枡さん:
はい、呆然としてましたね。
稲垣:
それはどういうタイミングがあって、ここでそういうことをやっていこうと?
枡さん:
やっぱり地元の皆さんの声ですかね。避難をされている皆さんからの声が…『こうあったらいい、ここが辛い』という声をお聞きして。
稲垣:
一番多かったのはどんな声だったんですか?
枡さん:
やっぱり水がない、電気がない、住むところがない。全てを失うっていうのはこういうことなんだろうなって。じゃ失わないようにする、もしくは復帰できる、レジリエンスな形をとるとなったらどうだろう…。高齢者にとっては『望むような幸せな時間が過ごせる』、子供たちにとっては『これから未来を作れる』エリア。考えると、このような仕掛けなのかなと。世代によって求める幸せって違うのかなっていう風に考えて動き出しています

稲垣:
何か機械ありますけど、枡さん何をしてる所なんですか?
枡さん:
これは、『井戸の水をちゃんと飲める水に作る』というプラントを今皆さんで頑張って作っています。海水を引いてこの機械に通したら水が飲めるようになる。
稲垣:
塩分も除去するってことですよね。
枡さん:
そうです。もう一つ仕掛けは必要になりますけど。海の水が飲めるようになると社会変わりませんか?
稲垣:
変わりますよ。
枡さん:
それを我々がやりたい。

この日は、海水の真水化計画を前に、井戸の水と機械を接続する作業を信州大学の先生や職員、学生らが行いました。

信州大学・手嶋勝弥卓越教授:
こういった地で、非常にシンプルな方法で安心安全な水を提供してあげるということをやりたいと。人々が安心して水が飲めるような環境にできるようなシンプルな仕組みがあるといいなっていうのが元々の思いです。
稲垣:
この機械の奥に大きな建物があって、これは何の建物になるんですか?
枡さん:
これは『空気中の二酸化炭素を収集してそれをエネルギーに換える』という作りの研究で展開します。

稲垣:
こういうのはもう実用化されて、実際に社会で使われている技術なんですか?
枡さん:
いえ、実はあの水の技術もそうですし、こちらもそうなんですけども、社会に出ていないものになります。

稲垣:
世界で初めての技術をここで、珠洲の見附島の前で、どんどん生み出していこうっていう、そんなプロジェクトなんですね。
枡さん:
そういう形になります、はい。子供の頃見た見附島とは形は変わりました。でも見附島なんです。社会もどんどん変わっていきます。ここを基点にしながら、新しい『見附島が見える世界』を作れるといいなと思います。
稲垣:
そんな素敵な未来をこれからもまた一緒に見させてください。
枡さん:
ぜひ御協力のほど、宜しくお願いします。

最近のニュース