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【能登人を訪ねて】#106 輪島市のと吉・坂口竜吉さん 2年7カ月の苦境を越えて

「能登人を訪ねて」今回は輪島市からです。地震で住む場所と生業を失って2年半あまり。店の本格再開に向け奔走する料理人の現在地です。

石川テレビ 稲垣真一アナウンサー:
「輪島市河井町に来ています。地震から2年7カ月が経ちました。能登では仮設店舗などで営業を再開する飲食店が増え、少しずつ賑わいが戻ってきています。今日紹介する料理人もその一人。幾度の苦境を味わいながら、決して店の再開をあきらめなかった男性の思いを伺いました」

稲垣:
宜しくお願いします

のと吉・坂口竜吉さん:
お願いします!

坂口竜吉さん。「のと吉」の3代目です。輪島市河井町にある仮設店舗で先月から仮営業をしています。

坂口さん:
9月の本営業を目標に今準備をしながら、少しずつ仮営業で営業しているような感じですね。ようやくここまで来ることができたという感じですね。

のと吉は、輪島市で半世紀以上続く料理店。地元の食材を使い、輪島塗の器で提供する料理の数々は長く地元の人々や観光客に愛されてきました。しかし、能登半島地震で店舗兼自宅は全壊。坂口さんは、妻と3人の子供を避難先の金沢に残したまま、輪島で単身、出張料理をしたり工事関係者の社員食堂で働いたりしてきました。

坂口さん:
家も店も失ったので、輪島をもう離れようかなって考えた時もあったんですけど、やっぱり離れられなくて…。震災直後はさすがにいろんなことが鮮明にまだ残ってるんですけど…その後『どうやって生活していこう』って思い悩んだり、何もできなくて落ち込んだりとかっていう、そういうタイミングのことってあんまり覚えてないというか。覚えていたくなくて、もう忘れようとしてるのかちょっと分からないんですけど。会社を破産させたので、思い出だけがここにあるのは変な感じなんですけど…この場所はもう入ることが出来なくなってしまっているので…。

地震の影響で、祖父の代から続いた運営会社が去年12月に破産。家族と共に暮らした店舗兼自宅は競売にかけられました。去年11月に仮設店舗の鍵を受け取ったものの、店をオープンさせるための厨房設備などを購入するお金がありませんでした。しかし…

坂口さん:
何もない中からいろんな人が助けてくれて『店をやってほしい』という声をかけてくれて…今こうしてこの場所に立っていられるので。

輪島の仲間がクラウドファンディングを行うことを提案。1000万円以上の資金が集まりました。この資金で厨房の設備を揃えたのに加え、飲食スペースの椅子などは知り合いの店から譲ってもらいました。そして、坂口さんがどうしても店を再開させたかった一番の理由が…

坂口さん:
これが私の母の兄が、『市中屋本店』という店をやっておりまして、その叔父さんが作ってくれたものになるんですけども。叔父さん夫婦はもう震災で命を落としてしまって…

おととし元日、輪島市朝市通り周辺を襲った大規模火災。焼け残ったタイサンボクの場所に市中屋本店がありました。この火災で叔父の市中圭祐さんと妻の春枝さんが亡くなりましたが、坂口さんの店で使っていた市中さんの輪島塗が500個ほど奇跡的に救出できました。

坂口さん:
せめて叔父さんが作ってくれたもの、自分の店にあったもの。それだけでもこれから大切に使わせて頂いて…で、ようやくこのタイミングで叔父さんと叔母さんに『本当にごめんなさい、助けられなくて』っていうことが言えるかなっていう…自分の一方的な思い込みでもあるんですけど。やっぱりそういったこともあって、何としてでも店は再開させたいっていう思いがずっとあって…。

輪島市の居酒屋「芽吹」。坂口さんは午前中ここで働いています。資材の高騰などで開業費用が当初の2倍以上になり、ダブルワークで生活資金を捻出しているのです。

坂口さん:
働けるって幸せです。震災直後は働けないのがずっと続いたのが一番きつかったですね…料理人として動けるタイミングが来てから精神的にも安定したといいますか…自分の存在意義が震災以後初めて認識できたというか。全て人の手が差し伸べられて、僕は今ここで家族と共に生きていけるというのは…他の人の力が本当に支えになってくれているということで、本当に感謝しかないです。

代表の池端隼也さんは地震前からの料理人仲間。

池端さん:
震災ですごい色んな社会の現実だったり、色んなことがあって…でも何かやっぱり料理好きで、食べてくれる人がやっぱり嬉しくて。だからそういう仲間と一緒にやってる感じがするんで…だから僕も意外と元気もらってますよ、竜さんとやってると。今、竜さんはやっとスタートラインに立ったと思うんですよ。あの仮設店舗ができて。だから本当に色々あったけど、色んな希望も持ってると思いますし、前向いてこれからお互い一生懸命やっていければなと思います。

夜6時半、仮営業がスタート。席を埋めた多くの地元客が坂口さんの料理に舌鼓を打ち、笑顔で語らいました。

客:
ここはもう名店ですし、料理もいいですし、お酒も最高に美味しいものが出してくださるので、我々も期待して待ってたんです。

客:
皆でこうやって楽しめるお店だったので、有難いですね。

坂口さん:
震災前に戻った実感がありますね。

稲垣:
今後このお店でどんな未来を紡いでいきたいですか。

坂口さん:
今日もたくさんの笑顔を見ることができたんですけども、料理を通して明るい未来が見えるような話ができたりとか、何か次のステップにつながるような場所になればいいなと思います。

稲垣:
今見える柔らかな灯が、復興への光となるようにこれからも応援していきますので宜しくお願いします。

坂口さん:
お願いします。

昼と夜のダブルワークで帰宅が深夜になることもしばしばということですが、坂口さんは「自分の料理でお客さんに笑顔になってもらえることが何よりもうれしい」と話します。

お店には、朝市通り周辺の火災で亡くなった叔父で輪島塗作家の市中圭祐さんが「市中佑佳」の名で作成し、日展に出品した輪島塗の絵画作品です。地震で全壊したのと吉に飾ってありましたが、奇跡的に救出されました。「お店でこの作品を見て叔父の事を思い出してほしい」と坂口さんは話します。

輪島市民に愛される店のと吉は来月、本営業を再開させる予定です。

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**【整形のポイントまとめ】**
- 「まあ」「うん」などの間投詞を削除しました
- 発言者ごとに改行・整理しました
- ★マークや()内のふりがなを削除しました
- 長い文に句点を補い読みやすくしました
- 「今日」「9月」などはすでに具体的な表記のため変更なし(「今日」のみ文脈上そのまま維持)

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