「能登・珠洲が大好き」珠洲の港でこの春デビュー18歳の新人漁師の思い

05/09(木) 17:45

能登に根差す「能登人」を訪ね、復興にかける思いを伺う「能登人を訪ねて」。今回はふるさと珠洲市でこの春から漁師となった18歳の男性に思いを聞きました。

（稲垣）
地面が引き裂かれたような大きな地割れ。珠洲市の蛸島漁港です。こちらでは大規模な液状化などが発生し、向こうに見えます港湾施設での競りが再開できない状況が続いています。それでもこの春、自ら漁師になりたいと志願してこの世界に飛び込んだ若者がいます。きょうは漁に青春を捧げる若い能登人に会いに来ます。

珠洲市蛸島漁港では、地震の発生から3週間後にようやく定置網漁が再開しました。
現在週5日漁に出るという上野登起男（うえのときお）さんのもとを訪ねました。

（稲垣）
ここが港…おそらく本来はここが元々の高さで、これだけ（港が）沈んだという事ですか？
（上野さん）
そうですね、沈んで岸壁が海側に傾いた。（船をつなぐ）ロープを何重にもしていたから船が助かったんだと思いますけど…
（稲垣）
船は助かった？
（上野さん）
無事でした。
（稲垣）
他にいま困っていることは何ですか？
（上野さん）
時間的に通常の操業ができなくなってしまった…

漁港の損傷が激しく、セリを行うことができません。そこで上野さんたちは、これまでよりも4時間ほど漁の時間を早め、水揚げした魚をトラックで金沢まで運び、競りにかける手法を取ったのです。

（上野さん）
能登の魚を皆さんに届けたいという思いがあったので…
（稲垣）
何とか漁の再開をという思いがあった中で春には希望の光が見える出来事があったそうですね。
（上野さん）
はい、高校を卒業したばかりのフレッシュな人材が入ったということで…

前咲斗（まえさくと）さん今年3月に高校を卒業したばかりの漁師1年生です。

今は先輩の後姿を見ながら道具の使い方などを勉強中です。

（稲垣）
朝早くからごめんなさい
（前さん）
まだ頭が回ってないです…
（稲垣）
春から入った前さんなんですが、働きぶりはいかがでしょう？
（上野さん）
即戦力というか、自分の与えられたポジションをやるんですけども、初日からしっかり網起こしの作業をやっているのを見て、これは頼もしいなと思いながら見ていました。
（前さん）
あんまり、まだまだです…
（上野さん）
やっぱり危険な作業もあるんで、安全管理とかロープの扱いは教えるんですけど、戸惑うところもあるかもしれないけど、まあまあ100点ですね。
（稲垣）
前さんはやってみていかがですか？
（前さん）
やってみて、やっぱり自分は海と魚が好きなので、すごく楽しく仕事をさせてもらっています。

能登の海と魚が大好きという前さん。子供の頃の思い出が、漁師になるきっかけになりました。

（前さん）
自分のおばあちゃんが、釣りと魚を教えてくれて、（釣った）魚を食べさせてくれて、それで一番最初に好きになったんですよ、魚と海を…そして、じいちゃんが漁師で、底引きとか行ってたっていう話を聞いて、すごくいいなと思って、自分も漁師目指そうということでなりました。
（稲垣）
僕もじいちゃんと近くの港行って昔釣りしたことがあって、やっぱりそういうのって思い出がすごく残るんですよね。
（前さん）
残りますね…

漁師になると決めた前さん。高校は、水産の課程がある県立能登高校へ進学。授業の職場体験で知り合ったのが上野さんでした。

こうして漁師の最初の一歩を歩み始めました。

「板子一枚下（いたごいちまいした）は地獄」と言われる世界、決して甘くはありません。毎日這いつくばって仕事を覚えます。

（前さん）
ロープを巻くときにロープが張っちゃうんで、それ飛んでくるかもしれないんで、それが危ないって言われますね。巻くときは焦らず、ゆっくり巻いてって言われます。焦りが一番ダメだと思います。
（稲垣）
焦る？
（前さん）
焦りますね…
（稲垣）
やっぱり難しいね、本当にね…へこむことも多い？
（前さん）
へこむことはないです。
（稲垣）
そうなんですか？
（前さん）
そこは怒られても勉強だと思ってるんで、大事にしてます。
（稲垣）
ここに見えるプレハブは何ですか？
（前さん）
これはここら辺の漁港の人たちの仮設住宅です。
（稲垣）
漁港の人たちの仮設住宅ってあるんですか？
（前さん）
あります。
（稲垣）
ちょっといいですか？すいません。一人暮らしの若者の家に入ってしまいました。
（前さん）
でも不便ですね、やっぱり…
（稲垣）
高校を卒業して今度1ヶ月、地元を離れた同級生の子も結構いたりするんですか？
（前さん）
親もこの地震で仕事がなくなったっていう人も多くて、それで一緒に金沢の方に行こうっていう人も結構います。家族で…
（稲垣）
地震に見舞われてすごく大変だったと思うし、これからも地震あるかもしれないと思うじゃない？
（前さん）
思います。でも、ここでいたいとは思っています。
（稲垣）
その思いの一番のところって何ですか？
（前さん）
やっぱり祭りが好きだったからというのと、ここの魚が美味しくて、海も綺麗なんでここで仕事したいなって思いました。
（稲垣）
今後に向けては、どのような感じで思っていらっしゃいますか？
（上野さん）
やっぱり地元の漁協の設備が復活することが一番。そうすると平常の操業が
できることになるんで、それが一番ですね。
（前さん）
やっぱりこれからも能登、珠洲が大好きなんで、残って頑張っていこうと思います。
（稲垣）
これからまた皆さん頑張ってください。