法律相談室
- 特別版
日ごろの生活の中で起きる思わぬトラブルを法律のスペシャリスト アディーレ法律事務所の弁護士がお答えします。
ケース①「トイレが長い父」
毎朝トイレが長い父のせいで、いつかは膀胱炎になるかも!トイレを独占する父の行為は罪になるのでしょうか。
正解は・・・罪にならない
たしかにお父さんがトイレを独占するという行為、
結果的には、膀胱炎という「人の身体を傷害」したのだから、傷害罪になるのでは?
と考えた方もいるかもしれません。
しかしながら、どのような行為にも傷害罪が成立するわけではなく、
刑法は、処罰にふさわしい危険な行為のみを、犯罪として扱うという
考え方を基本としています。傷害罪では、現実に他人に傷害を
生じさせる可能性のある危険な行為のみ、傷害行為と捉えて処罰の対象としているのです。
人の身体の機能を傷つける傷害行為については
例えば殴る蹴るなどの物理的なものから、
嫌がらせ電話をかけてノイローゼにするなど形の無い行為も傷害行為に当たります。
今回のケース、トイレの独占行為に傷害の危険がはたしてあるのかについてですが、
長いといってもトイレですから、いずれは出てきますし
あるいは、お父さんより早起きして先に済ませたり、外出先で用をたすことも出来ると思います。
現実の色々な状況を踏まえると、
特定の時間帯にトイレに長時間こもる行為について、傷害の危険があるとはいえません。
したがって、傷害罪は成立しないでしょう。
もっともお父さんが膀胱炎にさせるためにわざとやっていたら、
場合によっては犯罪が成立するかもしれません。
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ケース②「父親の不倫相手を子供が訴える」
不倫され泣き寝入りする母が不憫!父親の不倫相手を子供が訴えて損害賠償請求ができる?
正解は・・・できない
まず夫婦関係において、夫が浮気をしていた場合、
妻から不倫相手に対して損害賠償請求することは原則として可能です。
円満な夫婦生活を侵害されたわけですし、これは当然ですよね。
今回のケースでいうと子供から不倫相手に対しての損害賠償請求ができるかですが、
不倫相手が、父と子の関係をわざと邪魔をしたりするような
「特段の事情」がある場合でなければ、損害賠償請求はできません。
そもそもこれは夫婦の問題なんですね。
お母さんは「離婚したくない」ということで今のところ損害賠償請求をするつもりはありませんよね。
なので、娘から不倫相手に損害賠償請求するとなると
例えば不倫相手が父と娘が会うのをわざと会わせないようにしたり、金銭的援助を辞めさせたり、
積極的に父と娘の親子関係を壊そうとした「特段の事情」といえるような事実が必要かと思います。