石川テレビ



ふくしま
のりお
福嶋
則夫
氏(76歳)
木工芸作家
公益社団法人日本工芸会正会員
金沢市希少伝統産業木工専門塾講師

<受賞理由>
受賞者は金沢の木工の技を受け継ぐ数少ないひとりで、木の板を組み合わせて成形する指物(さしもの)や、鑿(のみ)や豆鉋(まめかんな)などを用いて木の塊から刳り出して形を作る刳物(くりもの)の技法で樹齢数百年〜数千年の材を使用し、その木の持っている美しさや特徴を最大限に表現できるように作品を制作している。
1948年、輪島市で生まれた受賞者は、1963年より建具店で木工技術を習得し、木工芸人間国宝・氷見晃堂(ひみ こうどう)や二代・池田作美(いけだ さくみ)氏の作品に刺激を受け、独学で木工芸の創作活動を始めた。地道な活動を続け、日本伝統工芸展等に出品を重ね、神代杉の柾目や板目の本体に板目の象嵌を施すことで自然の杢目に変化を持たせる独自の技法を編み出した。貴重な木材でも伝統工芸では使えない端材がたくさんあり、もったいない、木の端材を作品にうまく使うことができないかと考えたすえ、9年前に、細い木を縦に嵌め込んだ格子状の欄間、筬欄間(おさらんま)をヒントに、建具職人として培ってきた繊細で緻密な技と貴重な素材への思いが新しい作風を生み出し、昨年度の第70回日本伝統工芸展で高松宮記念賞を受賞するなど、高く評価されている。

さらに、存続が危ぶまれる伝統工芸「木工芸」の後進の育成に尽力している。「時代とともに希少伝統工芸といわれるように木工芸の職人・作家として生計を立てることが厳しくなっているが、 指物・刳物の技は伝承していきたい」と、現在も「金沢市民芸術村」に併設されている金沢の伝統文化の継承技能者養成を目的とする「金沢職人大学校」で行われている「金沢市希少伝統産業木工専門塾」の講師として木工芸の技の伝承、木への想いや魅力を伝えている。

いで
あきら
井出
氏(55歳)
観光学者 
金沢大学国際基幹教育院教授
<受賞理由>
受賞者は、「光と影」という歴史の多面性に視点を持つ「ダークツーリズム」の考え方を国内で先駆的に紹介してきた観光学者である。
「ダークツーリズム」は、20世紀末にイギリスの学者が提唱した観光の新たな概念で、戦争や災害をはじめとする悲劇の記憶を巡る旅と定義される。その代表的な事例として、
アウシュビッツ強制収容所や広島の原爆ドーム、各種の自然災害の被災地などがあるが、宗教観の違いにより、日本では悲劇を構造的に分析し、後世に伝え、教訓化することが少なく、受賞者は論文や新聞等への寄稿、講演などを通じて啓蒙活動をしている。
1968年、長野市で生まれた受賞者は、京都大学大学院で博士号(情報学)を取得。首都大学東京(現・東京都立大学)、追手門学院大学などを経て、2018年に金沢大学准教授に、2023年に同大学教授に就任した。 過去の惨事への記憶を繋ぐには、遺構の保存や語り部の存在が重要で、未来への教訓の承継や生き方の再考、近代への反省など、「ダークツーリズム」の持つ意義は大きいと、受賞者は話す。
著書に『ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅』(幻冬舎新書、2018年)、『悲劇の世界遺産 ダークツーリズムから見た世界』(文春新書、2021年)などがある。

また、2021年の7月から北陸中日新聞で月一回、「井出明のダークツーリズムで歩く北陸の近現代」を連載している。影の部分から地域に接近することで、これまで見えてこなかった歴史の相貌が描き出されている。石川県にとって、「学ぶ」という新たな観光資源としての可能性が生み出されていると言えよう。さらに、今年元日の能登半島地震の復興に向けて、これまで研究してきた「ダークツーリズム」の視点からの提案を期待したい。

 
 
○ITCクラブとは

昭和52年11月、石川テレビ放送が創立10周年記念事業の一つとして県内在住の有識者で構成する「ITCクラブ」を結成、地域の発展と地方文化の向上を目的に以下の事業を行う。

1. 石川テレビ賞の選考、贈呈
2. 講演会の開催
3. その他クラブの目的に沿う事業

令和6年4月1日現在の会員数 168名

○石川テレビ賞とは‥‥‥

昭和53年5月、ITCクラブにより創設、石川県内に在住する個人または団体で、美術・工芸、教育・文化、産業・経済、スポーツ、社会福祉などの各分野で地域社会の発展、向上に貢献、また将来性が極めて顕著なものに贈られる。
候補者はクラブ会員から推薦されたものに限り、同クラブ内で選考委員会を設けて決定する。
昭和53年の第1回から令和5年の第46回までに184個人、15団体を顕彰。

○お問い合わせは‥‥‥

ITCクラブ事務局(槇野)
920−0388 金沢市観音堂町チ−18
石川テレビ放送
電話 076−267−2141

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